最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1499号 判決
主文
原判決を破棄する。
本件を廣島高等裁判所に差戻す。
理由
弁護人栗山力上告趣意について。
原判決の事実認定の前半においては、「被告人等三名は共謀の上窃盗の目的で、同年五月二十六日午前零時頃同村五百八十四番地国廣保次方に至り、屋内で金品を物色して居たところ、就寝中の同人の妻ミクマ(当時四十八年)が目を覚したので、被告人等三名は突嗟に逮捕を免れたい氣持から、被告人原田、同小村は交々に右ミクマに対して静かにしろと言いながら持って居た拳銃又は日本刀(証二十九号)を突きつけ被告人吉野は傍から之を助勢する態勢で交々に同女を脅しその抵抗を抑圧し」と判示している(本件被告人は、原審公判廷においては、「金品を物色していたところ」及び「逮捕を免れたい氣持から」という趣旨の供述は全然していない)。この個所に重点をおけば、準強盗と見られ、原審が、刑法二三八條の準強盗の規定を適用したのは一應正当のように見える。しかしながら、原審事実認定の後半においては、「被告人原田、同小村は交々に右ミクマに対して静かにしろと言いながら、持って居た拳銃又は日本刀(証第二十九号)を突きつけ被告人吉野は傍から之を助勢する態勢で交々に同女を脅してその抵抗を抑圧し、その間に被告人吉野は同家の居間にあった箪笥の中から国廣保次等所有の衣類約二十七点を取り出した上之を持ち運びに適するように其の場にあった女帶で一括りに縛り合せて右衣類を完全にその実力支配下においたのであった」旨を判示している。この箇所に重点をおけば、強盗と見られ刑法二三六條の強盗の規定を適用するのが正当のように思われる。原審は何故に強盗の規定を適用しなかったか。要するに、原判決の事実認定の判示には、疑義があり、当審ではこの判示を基本として直ちに正確な法の適用をすることができない。論旨は、結局理由があり、本件は破棄差戻すを相当とする。
よって、旧刑訴四四七條、四四八條の二に従い主文のとおり判決する。
本判決は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)